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ロボット支援下鼠径部ヘルニア修復術に対する日本ヘルニア学会からの提言(2024年改訂)

はじめに
 日本ヘルニア学会では、これまでロボット支援下鼠径部ヘルニア修復術の安全な導入と普及のために2019年6月に初版、2022年6月に改訂版の提言を示してまいりました。この度、当該術式の実施ならびに導入希望施設の現状を熟慮し、慎重な議論を重ねた結果、2024年改訂として新たな提言を示すこととなりました。当該術式を導入・実施される施設においては適切に遵守いただくことを要望いたします。

 

提言)
 ロボット支援鼠径部ヘルニア修復術は、現時点では保険診療に位置づけられていない自由診療に該当します。日本ヘルニア学会では、鼠径部ヘルニア領域におけるロボット支援内視鏡手術を安全に導入・普及させるため、以下を提言いたします。
1. 各診療科依存型ではなく,各施設全体としての独自の導入ガイドラインを作成し、各施設の倫理委員会(あるいは臨床研究審査委員会)などの承認を得たうえで、安全な手術に努めること。
2. 本手術は臨床研究段階であり、実施に当たっては患者および関係者にその利点および起こりうる偶発症・合併症さらに負担金などについて具体的に説明し、十分な理解の上で同意を得ること。
3. 日本ヘルニア学会が定めるNational Clinical Database (以下、NCD)登録を行うこと。NCD登録には以下2つの申請が必須となります。

(A)日本ヘルニア学会へのロボット支援鼠径部ヘルニア修復術 実施施設登録

  1. ・登録申請フォーム (Word)
  2. ・登録申請フォームはメール jhs0601@asas-mail.jp にて提出してください。

(B)日本ヘルニア学会が定める鼠径部ヘルニアのNCD登録

  • ・NCD登録フォーム https://forms.gle/3GLn1NdS2beudiJ77 より申請してください。
  • ・詳細は 新NCD登録 を参照してください。
  •  

    4. 下記(A)術者条件および(B)施設条件を満たすこと。

    (A)術者条件

    1. ① 日本内視鏡外科学会が定める「ロボット支援内視鏡手術導入に関する指針(全領域共通)」を遵守すること。
    2. ② 当該施設および診療科の責任者のもと、コンソール医師は鼠径部ヘルニア領域のロボット手術 10 例の助手経験を経て、該当臓器におけるロボット支援手術に熟練した医師の指導のもと、ロボット支援内視鏡手術を導入することができる。ただし、日本外科学会外科専門医であれば上記助手経験は不要とする。
    3. ③ 消化器・一般外科医としての一般的な開胸/開腹および胸腔鏡/腹腔鏡手術の手術手技と周術期管理、合併症の治療法を充分習得していること。
    4. ④ 内視鏡下に見る各臓器の解剖学的構造や相対的位置関係を理解していること。
    5. ⑤ 内視鏡手術における特殊手術器具の使用法に習熟していること。
    6. ⑥ コンソールからの遠隔操作による視覚-手指運動協調(hand-eye coordination)を習得していること。
    7. ⑦ 手術支援システムに備わるデュアルコンソール機能は、ロボット支援手術でのコンソール操作に習熟した医師のみが使用すること(デュアルコンソール機能下で、2 台のコンソールにより手術を行う場合、少なくとも 1 台のコンソール操作はロボット支援手術に関する手術技能に習熟した医師が担当すること)。

    (B)施設条件

    1. ① 日本内視鏡外科学会が定める「ロボット支援内視鏡手術導入に関する指針(全領域共通)」を遵守すること。
    2. ② 各術式のロボット支援内視鏡手術を導入する際には、該当術式の手術見学を最低 1 例以上行うこと
    3. ③ 日本消化器外科学会消化器外科専門医が1名以上在籍していること。
    4. ④ 日本内視鏡外科学会技術認定取得者が1名以上在籍していること。
    5. ⑤ 日本ヘルニア学会が定めるレジストリ制度(NCD)に参加し当該術式症例を登録すること。
    6. ⑥ 当該疾患に関する十分な経験と知識を有した医師が1名以上在籍していること。
    7. ⑦ 当該術式を独立したチームとして実施するためには、(B)施設条件①~④に加え、当該術式の見学ならびに該当臓器におけるロボット支援手術に熟練した医師による指導をあわせて5例以上を経験していること。
    8. ⑧ すでに他臓器で独立したチームとして実施している施設が、当該術式を独立したチームとして実施するためには、(B)施設条件①~④に加え、当該術式の見学ならび該当臓器におけるロボット支援手術に熟練した医師による指導をあわせて2例以上を経験していること。

     

    5. 当初は,該当臓器におけるロボット支援手術に熟練した医師(熟練指導医)を招聘しその指導下に行うこと。熟練指導医とは同手術の経験豊富な指導者を指し、概ね以下の要件が望ましい。

    (A)日本消化器外科学会消化器外科専門医であること。
    (B)日本内視鏡外科学会内視鏡技術認定取得者であること。
    (C)当該術式の十分な知識と経験を有すること。
    (D)日本ヘルニア学会教育セミナー受講修了者であること。


    以上

    2024年11月改定