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『2021年版 鼠径部ヘルニア分類(新JHS分類)』運用のお願い

2021年1月25日

 

『2021年版 鼠径部ヘルニア分類(新JHS分類)』運用のお願い

 

■ はじめに

謹啓、時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 ご存知の通り、日本ヘルニア学会:JHS(旧 日本ヘルニア研究会)は、2006年4月、独自の2006年版 鼠径部ヘルニア分類(JHS分類)を提唱し、以来、皆様の実臨床に役立つよう情報を発信してまいりました。当時はまだ国際的に統一された分類がなかったこと、また腹腔鏡下修復術にも対応可能な新分類の策定が急務であったことを鑑みて、本邦初の分類を発信した経緯がございます。
 しかしながら、最近、HerniaSurge Groupから発表された International guidelines for groin hernia management(文献)の中で、鼠径部ヘルニア分類として European Hernia Society の分類(EHS 分類)(資料1)を推奨するとの記載がありました。本ガイドラインはヨーロッパ、アメリカ、アフリカ-中東、オーストラリア、そして日本が所属するアジアパシフィックの各ヘルニア学会による合意として、世界19カ国から50人の専門家が参加して作成した初めての国際基準です。その中で、推奨度は高くはない(low)ものの、全世界に多数存在する鼠径部ヘルニア分類の中でEHS分類だけが推奨された事実を、JHSとして看過するわけにはいかないとの判断から、理事会・評議員会で慎重な議論を重ねてまいりました。今後、我が国の外科医、特に若手外科医がその研究成果を国際学会や英語論文を通じて遅滞なく世界に発信、あるいは国際的な場で対等の議論を行うためには、基本となる分類法を世界基準と同じくさせる必要があります。また折しも、2021年から鼠径部ヘルニアに関するNCDへの入力項目が増えることになったため、今後ここに蓄積されるデータは世界的に見ても莫大なものになります。将来的にこれを有効活用するためにも、EHS分類に則った形でデータを入力する必要があります。最終的にJHSといたしましても、EHS分類に準じた新分類が必要との結論に至りました。そこでJHSが新たに作成したものが「2021年版 鼠径部ヘルニア分類(新 JHS 分類)」です(資料2)。
 会員の皆様方にはこれまで2006年版 JHS分類の臨床応用と普及に関して多岐にわたるご協力・ご支援を頂き心より感謝しておりますが、このような状況をご理解いただき、今後は新JHS 分類を広くご活用いただきますようお願い申し上げます。

謹白

 

文献:International guidelines for groin hernia management. Hernia (2018) 22:1–165
https://doi.org/10.1007/s10029-017-1668-x

 

資料1: European Hernia Society の分類(EHS 分類)
資料2: 「新JHS分類(2021)」

 

■ 新JHS分類の目的

術式選択の基準や術後成績の客観的な比較に用いるとともに、国際分類[European Hernia Society (EHS) 分類]に準じることにより、研究成果を遅滞なく世界に発信する。