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鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について

鼠径ヘルニア治療は、脱出しているヘルニア内容を元のおなかの中に収めて、ヘルニアの出口を閉じることにあります。
この修復にメッシュを用いない『組織縫合法』とメッシュを用いる『メッシュ法』の2つがあります。
『組織縫合法』は1990年代以前に多く行われていた手術です。ヘルニアの原因であるヘルニア門を、患者自身の組織を用いて糸と針で縫いよせ閉鎖する方法です。この自身の組織を使用する方法は、人工物の使用が糸のみで極めて少なく、感染に強い利点があります。一方、組織を糸で縫い寄せるため緊張がかかり手術後の不快感や疼痛の発生率、また再発率の高いことが欠点です。このため、現在では手術前に感染を起こしているなど医学的に後述のメッシュを使用しないほうが良いと考えられる状況など限られた状況で行われる事が多い手術方法です。

 

現在の大半の手術は『メッシュ法』で行なわれています。

1)鼠径部を直接切開する方法

鼠径部切開法という手術方法で、直接鼠径部を切開して治療する手術方法です。日本における鼠径ヘルニアの手術の約6~7割がこの方法で行われています。具体的には鼠径部のヘルニアで腫れている所の少し上を斜めに約4cm切開して手術を行います(図1)。ヘルニアへのアプローチとして,大きく分けて前方から到達する方法と後方(腹膜前腔)から到達する方法があります。前方からの到達法はヘルニアに前方から近づき、ヘルニア内容をおなかに押し戻してからヘルニアの出口に前からメッシュを挿入します(図2).一方,後方(腹膜前)からの到達法はヘルニアに後方から近づき、ヘルニア内容をおなかに引き戻してからヘルニアの出口の後ろにメッシュを敷いて閉鎖する方法です(図3)。図4に前方からの典型術式としてリヒテンシュタイン法、メッシュプラグ法術後のメッシュ位置(図4a,図4b)と後方(腹膜前)からの典型術式としてクーゲル法術後のメッシュ位置(図4c)を示します.

鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図1) 鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図2)
鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図3) 鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図4a)
鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図4b) 鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図4c)

2)腹腔鏡を使用する手術

鼠径ヘルニアの手術の方法の一つに、手術用の内視鏡を用いた、腹腔鏡下手術があります。腹腔鏡手術は、ポートと言われる筒を腹腔内に3本挿入し、その筒を通じて内視鏡や操作に必要な器具を挿入し、内視鏡の画像を映し出した大きなモニターを見ながら行う手術です。この方法には、大きく分けて腹腔内(おなかの内側)から手術をおこなうTAPP(transabdominal preperitoneal approach)法(図5a,図5b)と腹壁内(おなかの壁)からおこなうTEP(totally extraperitoneal approach)法(図6a,図6b)があります。しかしながら、TAPP法とTEP法ともに術後のメッシュ位置は基本的には同じです(図7)。

鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図5a) 鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図5b)
鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図6a) 鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図6b)
鼠径ヘルニア(成人)の手術方法について(図7)